やっぱり「みんなで楽しく」が、一番でしょ? ― 【Interview】食堂カフェ VIORIN

島のしごとサポートセンターでは、「課題=資源??地域のしごとをもっとオモシロく」をモットーに、島で「しごと」を作ろうとする方々に寄り添い、分野・エリアに関わらず広い視野をもって地域の課題や資源を扱い、一緒に新しい可能性を模索しています。

この記事では地域課題に向き合う島の先人たち、ふた組にフォーカスをあてます。ふた組目は 東浦にあるカフェ“食堂カフェ VIORIN”の大倉 知映さん。淡路島に移住した人なら一度は訪れたことがあるお店。いつだって楽気に動き続ける知映さんの原動力とは?カフェ店主に留まらぬお話を伺いました。

こんなんあったら、おもしろくない?

― 知映さんのお店は、地元の方も移住者の方も、観光の方も。年齢層も幅広く、さまざまな人たちが集うイメージです。

生まれも育ちも淡路島ということもあって、昔からの友人たちや、お世話になってきたおばちゃんたち、ママ友もよく来てくれます。淡路島に引っ越してきたという方も多いですし、子ども食堂もひらいているので、子どもたちも来てくれます。

つい最近は「5年ぶりに淡路島に来たから顔見に来たよ!」って、馴染の島外のお客さまもいらっしゃって、うれしかったな。

― 食堂カフェ VIORIN と一言では表せないほど、イベントもたくさん開催されてますね。

ついつい企画しちゃうんですよね。カフェの隣に雑貨を販売している場所があって。そこで、洋服をつくってる方のポップアップを開催したり。ついでに夜はカフェスペースでライブして。ふたつ同時にやったらお客さんも増えるかな~?みたいな笑。

旦那さんからは「服が気になる人は服、歌が聞きたい人は歌だけちゃうの」って、言われたりもするんですけど笑。私ならついでに一緒に楽しみたい!って企画してしまう。

― 知映さんらしいです。

この間は、朝ごはん、お昼、夜は貸し切り営業して……。

― 朝から夜まで!?笑

さすがにハードでしたね笑。でも常連さんのお願いで「ゲストが来てるからお願いしたい」って。それって別の日にずらせないし「やるしかないか!」って。

― その原動力はどこから湧いてくるんですか?

めっちゃそれみんなに聞かれる!笑。でも私からしたら、逆になんで?って。「こんなんあったらおもしろいやん」と、思うことを素直にやってるだけなんですよ。

まるで、相談窓口

― 移住者のお客さまも多いイメージです。

ここ数年ですごく増えたと思います。地元のお客さまはグループでおしゃべりされてることが多いですけど、移住者の方はちょっと違うんです。たまたま隣に座った人と仲良くなったり、カウンター越しにおしゃべりしたり、情報を求めてる感じがします。

― 情報、ですか?

一旦移住して、いい家さがしてる~とか。友だちつくりたいっていう方も多いです。

ランチを食べ終わった方が、私に話しかるタイミングを待ってくださってるな~って感じることもあります笑。なにか聞きたくて、ここに来てくださってるんでしょうね。

―カフェでコミュニケーションを求めてるって、おもしろいですね。

冬はお味噌づくりを毎年開催してるんですけど、参加者のほとんどが移住の方ですよ。ワークショップでわいわい仲良くなって、子どもたちの学校のこととか、新しいお店のこととか、情報交換されてます。移住者の方は「島の暮らしを楽しみたい!」って気持ちが強いんでしょうね。

―空き家の相談があると紹介したりするんですか?

もともとお店とは別に、空き家プロジェクトを10年以上前からやってて。不動産屋さんに出ない空き家って、地元民じゃないとわからない。

気になる家があっても、家主さんに警戒されるから直接は聞きにくい。それとか、家主さんが島にいなくて誰に聞いたらいいかわからないとか。それを、代わりに聞いてみたり。

― そんなことまで……!

あいてるおうちに明かりが灯って、ジャム屋さんが入ったり、あいてた畑に、いろんな野菜が植わったり。斜め前の空き家に陶芸家がやってきたぞ!?とかとか。そうなったら島の外のマーケットに遊びに行かなくてもいいよな~って。

― カフェの域を超えて、相談窓口みたいです。

この辺の地域の情報を教えてくださいっていうメールとかメッセージとかは常にあるので、そういうのもお返事したりして……。求めてる人がいるから、それなら~って。でも最近はちょっと控え気味に、一応してます笑。

みんなの居場所、食堂カフェVIORINの形

― カフェというか、交流地点というか、相談窓口というか。さまざまな顔をもつVIORINさんですが「子ども食堂」も主催されているんですよね。

2020年から、淡路島の生産者さんに素材を寄付していただいたり、お客さまに募金いただいたりして運営を続けています。クリスマスには「みんなでいい肉食べて」って、募金してくださった方もいらっしゃいました。

当初はお店で食べてもらうスタイルでしたが、現在はお弁当の配布になってます。

― コロナ禍にはじめられたんですね。

あの頃って、子どもたちはもちろん大人もじっと家にこもって。時間があっても行く場所がないって感じでしたよね。

家の中にしかコミュニティがなくて。ちょっとでも、気持ちよく過ごすきっかけがつくれないかなって。お母さんたちにも休憩してほしかったからね。

― なるほど、なるほど。

オープンから2時間は子ども優先で配って、残りの2時間は大人の販売もOK!ってルールで。

この辺の、おじいちゃんやおばあちゃんにも浸透してきて。「今日は子ども食堂やから弁当あるな」って買いに来てくれるようになりました。SNSでしか発信してなかったけど、継続してるとそういう方もでてきました。

― おじいちゃんおばあちゃんが来てくださるって、このあたりに馴染んでるって感じがしますね。

そうそう。お母さんと一緒に手伝いに来てくれてる子がお弁当箱に絵を書いてくれたこともあったな~。その子より年下の子たちがね、絵を書いてもらうの待ってたりとかして。

― その光景、愛しすぎます!

あと、手伝いたいって方も増えてます。子どもの「ありがとう~」って本当にピュア。その言葉かけもらうだけで染み渡るくらいうれしくて。

あと、子どもに話しかけるときってちょっと声のトーンが高くなったりする。それだけでも元気になる!

みんなそういう実感求めて来てくれてる気がします。

― お手伝いしたい方が増えるっていうのもおもしろいですね。

みんな居場所を求めているのかもしれないです。例えば、おうちでお商売してる方とか、ひとりで完結しちゃうから違うコミュニケーションを求めてたり。お母さんたちだと、お母さんとしての役割でいっぱいいっぱいになってしまうから、

自分でいられる場所を求めてたりとか。

― なるほど、なるほど。

ひとりの人間としていられる居場所みたいになってるのかな。子どもたちのためにやってるのはもちろんだけど、手伝うことで居場所ができて救われてる人もいるのかも。

私は幼いときから「はみご」がいやなんよね。自分がされたときにすごく嫌だったから。1人でポツンとしてると声かけちゃうし、一緒になにかできないかなって考えちゃう。やっぱりみんなで楽しいのがいいでしょ。

― 「みんなで楽しい」は、知映さんにとって大切なポイントなんですね。

そう!小学校の卒業文集にも書いてたみたい笑。「おじいちゃんもおばあちゃんも、子どもも大人も動物もみんなで楽しく過ごせる場所をつくりたい」って。あれ?なんか、ちゃんとそういうことしてるね笑。

― いや、ほんとうに。もうすでに、いろんな切り口の活動がありますが、これからさらに形にしていきたいことってありますか?

子ども食堂に来てくれてる子たちに、いろんな大人に出会ってもらいたいです。

親御さんがこれになりなさいって言ってても「そんなことないで」っていう大人もいるよ~って。絵が好きなら画家になれば?みたいな感じで。

今も子ども食堂の延長で、マジシャンの方呼んだり、ライブしてギターを触れる機会をつくってみたり。

― 素敵すぎます!

この前、絵描きの女の子が引っ越しすることになって、余ってたキャンバスを持ってきてくれたことがあって。絵を描くのが好きな子どもにあげてみたら、めっちゃ喜んで「これに書いてみる!」って興奮してね。

紙じゃないものに書けるって、貴重な経験やん?そこからまた、なにかにつながるかなって思うし、その子のチャンスになるかもしれない。ここで、そんなことが湧き上がっていったらおもしろいよね。

― すごくおもしろいです!

あとは「地域とのつなぎ役」ができる人が、出てこないかな~って。移住者さんは増えてるけど、自分のやりたいことを実現しに来てる人が多いから。

掘り起こしみたいなことを、若い子たちでやってくれる人がいたらもっとおもしろくなりそうじゃない?

― 知映さんがライフワークとしてやってきたことですね。そういう方が増えたら、もっともっと可能性が広がりますね。

いやほんとに。島のしごとサポートセンターのイベントも、ぜひVIORINでやってほしい。お願いできたらめっちゃ助かるんやけど笑。

― ほんと、ぜひ。やりましょう!楽しい気持ちになれるお話ばかりでした。貴重なお時間ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

移住者も島の人も、観光の人も。大人も子どもも垣根なく立ち寄れる食堂カフェVIORIN。みんなの交流地点であり、相談窓口であり、今も楽しくおもしろいことが起こり続けています。そして、その渦の中心にあったのは、知映さんの「みんなで楽しく!」という幼い頃からの気持ちでした。なにか楽しい事が巻き起こる、食堂カフェVIORIN。これからの知映さんの活動にも、目が離せません。

食堂カフェ VIORIN
656-2311 兵庫県淡路市久留麻2004-2

この記事を書いた人

shigoto_admin