“好き”からはじまったスパイスショップ。心地よく気持ちいい、仕事をつくる。―【Interview】ぱらりと 郷田友恵さん

島のしごとサポートセンターでは、「課題=資源??地域のしごとをもっとオモシロく」をモットーに、島で「しごと」を作ろうとする方々に寄り添い、分野・エリアに関わらず広い視野をもって地域の課題や資源を扱い、一緒に新しい可能性を模索しています。

この記事では地域課題に向き合う島の先人たちにフォーカスをあてます。今回お話を伺ったのは、スパイスショップ「ぱらりと」の店主、郷田友恵さん。きっかけは、「淡路島にスパイス屋さんがほしい!」という郷田さんの素直な願いから。はたらきかたをチューニングしながら、“好き”という気持ちと共にはじまったお店づくり。オープンしてまもなく2年を迎える、郷田さんのこれまでとこれからを伺います。

はたらくってやっぱり楽しい!自分らしい生き方ってどこにある?

郷田さんは、もともと学校の先生だったと伺いました。

郷田:
そうなんです。神戸の中学校で7年間、英語の教師をしていました。当時は本当に忙しくて。「仕事99:プライベート1」みたいな生活だったんです(笑)。

― 99対1ですか!ハードワークだったんですね。

旦那さんは飲食業だったので、生活リズムも合わず。その頃から「いつか淡路島に住みたいね」と話していたんです。そんなとき、たまたま夫に1年限定で沖縄での仕事の話が舞い込み「じゃあ、淡路島に行く前に、長い新婚旅行のつもりで行っちゃおうか!」と、仕事を辞めて沖縄へ。

― 1年の新婚旅行!素敵です!

そうですね、心機一転。新しい暮らしにわくわくしました。

沖縄では、ゆっくりされたんですか?

何もしないのも苦手なタイプなので、教師だったことを活かして、最初はNPOの無料塾のスタッフとして勤めました。途中から、道の駅でマンゴーの梱包や販売のアルバイトも。特にマンゴーの仕事が楽しくて!期間限定のチームで、裏方で箱詰めしたりして。「仕事って楽しい!」って、改めて実感できました。

―マンゴーの仕事、沖縄っぽいです。

実はもともとマンゴーは苦手だったんです。けど、新鮮な本物のマンゴーを食べて感動するくらい美味しくって。大好きになりました。チームのみんなとバックヤードでワイワイ作業をするのも、思いのほか楽しくて。沖縄での最後の3ヶ月間だったんですけど、もっと長い間やればよかったなって思うくらいでした。

― その後、2019年に淡路島へ移住されたんですね。

こっちに戻ってくるタイミングで、ちょうど移住支援住宅があいていて。ラッキーでした。沖縄で得た、はたらくことの楽しさを淡路島でも感じたくて。産直市場で働きたいなと、南あわじ市の福良マルシェに「働き手の募集ないですか?」って聞きに行ったんです。

―本当に産直で働くのが楽しかったんですね。

ほんとに(笑)。残念ながら当時はマルシェスタッフの募集はなくて。その代わり、運営会社が一緒だった「うずしおクルーズ」の方でクルーズ船のガイドをやってみない?って声をかけてもらったんです。

―まさかの展開ですね!

未経験だし、迷ったんですけど、「せっかくだし、やってみよう!」って。ただ、ガイドとしてデビューして3日目で、新型コロナウイルスの影響で自宅待機になり…。少しずつ営業は再開していったのですが、完全にフル出勤になるまでは時間がかかりました。

その後も、ガイドの仕事にはやりがいを感じていたのですが、出口の見えないコロナ禍で……。いろんな制限がある中、ストレスが溜まることもあって、家でついつい愚痴をこぼすようになりました。

―あの時は誰しも苦しかったですよね。

そんな自分が嫌だったから沖縄で切り替えたつもりだったのに、また同じことしちゃってるって。それなら、何か自分の好きなことを少しでも仕事に繋げられたらいいんじゃないかって考えるようになりました。

好き!からはじまった、スパイスショップ。

― 今日、いれていただいたチャイ。とっても美味しいです。

ありがとうございます。20代の頃、キャンプで飲んだチャイが感動的に美味しくて、それ以来、チャイが大好きになりました。それこそコロナ禍でお家時間が長くなったことで、スパイスからチャイを作るのにハマっていきました。

― スパイスからいれるチャイ、香りも味わいも特別ですね。

うれしいです、ありがとうございます。お店をはじめる前は、島の外にお出かけした際にスパイスを揃えてたんですけど、次第にスパイスショップが淡路島にあればな~なんて考えるようになって。

―あったかい時間が想像できます。ゆるやかでいいですね。

友人とチャイを作って飲みながら「スパイスのことを仕事にしてみたいかも?」って、口に出して言ってみたんです。「それなら、他の人も呼ぼうよ。ワークショップにしたらいいやん」って、どんどん人を集めてくれて。気づけばワークショップをやることになっていました。

―楽しそうな盛り上がり!

右も左も、360度わからない!お店ってどう、オープンすればいいの?

Marusho Marche DoA Doorには、「ぱらりと」をはじめ、去年お話を伺った「Cota:Cota;COFFEE design + roastery」など、さまざまなお店が連なる。

―そこからどうやって、今のお店につながったんですか?

ワークショップを少しずつ開催していたら、夫の知人から「お店やってみない?」って声をかけてもらったんです。

―すごいタイミングですね!

でも最初は、ネット販売くらいで細々とやるつもりだったので、「店舗なんて自信ない~っ!」って、ものすごく尻込みしてたんです。

―いろいろ考えてしまいますよね。

やっぱり不安で。そしたら飲食業の先輩である夫から「スパイスだけでも、チャイだけでも、正直難しいと思う。ネットショップとか、卸売りの販路も開拓しつつ、いろんな方向からスパイスを売る方法を考えよう!」とアドバイスをもらって。

―旦那さん、ナイス後押し(笑)!

それで「ええい!」と覚悟を決めて、スパイス屋さんとしてスタートすることになりました。

― 覚悟を決めてからの準備は順調でしたか?

いやもう、右も左もわからないどころか、360度わからない状態だったんです(笑)。

―それは大変ですね(笑)。どうやって具体的に進めていったんですか?

起業にあたって補助金を使うことになって。島のしごとサポートセンターの方にもサポートしてもらいながら、オープン1ヶ月前に「プレイベント」をやってみることになりました。夫が働いているヒラマツグミさんのカフェをお借りして。プレイベントでは、チャイの試飲会やスパイスの販売をしました。ロゴを作ってくれた友人にフライヤーのデザインもお願いして、ちゃんと告知もして。

―まさにオープンの予行演習ですね!やってみてどうでしたか?

やってよかったです!実はお店を始めるにあたって、どれくらい商品が売れるのか、準備に何が必要なのか、全然ピンと来ていなかったんです。10人くらいの方が、お客さまとして来てくださったんですけど、とってもリアルに想像できたというか……。

―小さく試せたことで、見通しが立ったんですね。

そうなんです。イベントをやったことで、オープンに向けて揃えないといけないものが具体的に見えてきましたし、何に経費を使うのかも整理できて。おかげで、4月のオープンに向けてしっかり準備することができました。

島内のお店とコラボしたスパイスキットなど、身近に使いやすいラインナップも。

ふたつの仕事を行き来する、心地いいバランスを探して。

― 無事にオープンした「ぱらりと」。とても可愛らしいお名前ですが、由来はあるんですか?

実は、最初は全然名前が思い浮かばなくて。仮で夫婦間でのあだ名をお店の名前にしてたんです。それを知人に相談したら「やめといた方がいい」って言われて(笑)。

―どんな名前だったんだろう、想像できないです(笑)。

昔から仲良くしている友人夫婦に相談したんです。そしたら、その旦那さんが「スパイスを『ぱらりと』するというのと、ぱらりとする人という意味で『ぱらりと(人)』というのはどう?」って提案してくれて。それがすごくしっくり来て、この名前に決まりました。

― 郷田さんの活動にぴったりの素敵なコンセプトですね。最近は販売に加えて、スパイスのワークショップなどもされているとか?

はい。昨年末はリクエストにお応えして「スパイスお屠蘇」を作るワークショップをやりました。みかんの皮や生姜、シナモンなどを日本酒やみりんに漬け込むんです。

― おもしろそうですね!

これから淡路島産のスパイスのラインナップも増やしたいと考えています。耕作放棄地を開拓した場所で畑をされている、farm studioさんのウコンを商品化できたらな~と考え中です。他にも、島の食材を使ったミックススパイスも開発したいですね。

ワークショップでつくったお屠蘇。作り方を調べていたところ、スパイスでもできるな!とひらめいたそう。

― 島の食材とスパイスが交わっていくのは面白いですね。

スパイスってまだまだハードルが高い食材なので、ワークショップなどを通して、暮らしに落とし込んで、みなさんの身近な存在にしていけたらいいなと思っています。

―現在も、クルーズ船のガイドとスパイス屋さんの2つをお仕事にされてるんですよね。この働き方はいかがですか?

今はお店を週に4~5日、ガイドは週に2日、半日勤務しています。船に乗って表に出て喋る仕事と、お店で自分の好きなスパイスと向き合う仕事と。それぞれを行き来できるのが、すごく良い気分転換になってます。

―どちらかひとつじゃなくて、両方やってみるっていうのが、郷田さんにはいいバランスだったんですね。

今後はどんな風にバランスを変えていくか、その時々で考えていくことになると思います。現時点では、ふたつの仕事があることが心地いいです。

― スパイスを通して、友恵さんの心地よい輪がさらに広がっていくのが楽しみです!ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

最初の一歩は、自分の「好き」を口にすること。

郷田さんは、ついつい愚痴をこぼしてしまう自分や、日々の働き方に対する違和感を決して放置せず、しっかりと自分自身と向き合ってこられました。そんな郷田だからこそ、仲間たちも、「好き」という一言を見逃さず、応援したくなったのでしょう。

周囲の後押しはもちろんですが、ドキドキしながらも「えいっ!」と勇気を出してやってみた、郷田さん自身の行動力があってこそ。

自分自身の心としっかり向き合い、小さくてもまずは形にしてみること。ぴかぴかの笑顔で、郷田さんがお店で迎えてくれる理由に、触れられたような気がしました。

ぱらりと
〒656-0051 兵庫県洲本市物部3丁目6−13

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